研究概要 |
本年の目標として 1.多数で不均一な要素からなる大自由度の非線形系が、その安定的作動を阻害する要因---(いわゆるノイズを含めた)環境の変動、動作が不安定な要素の混入など--に打ち勝って、システムを安定化させる機構。 2.上記の系がその安定的作動を阻害する要因を逆に利用して、システムの機能を高める機構。 を明らかにするものと当初設定した。そこで,次の研究を行い,一定の成果および中間的結果を得た。 1確率共鳴の理論では,従来,対象とした系全体に同等のレベルのノイズ(一様ノイズ)が付加されるものが扱われてきているが,本研究では,系の構成要素に依存した大きさのノイズ(非一様ノイズ)を付加することで,確率共鳴の効果(SPA:Spectrum Power Aplitude)が増大することを見いだした。 2.神経系の発火のモデル方程式であるFitzHugh-Nagumo方程式系にノイズを付加する項を導入し,確率共鳴現象を調べ,これを,人工内耳を装着した聴覚障害者の外部音へ感応性を示した先行研究と対応させた。 3.社会性昆虫であるアリの採餌行動において,走化性の弱い個体の混入が系全体の採餌効率を高めることを数理模型を通して示してきたが,今回は,数理模型を裏付けるものとして,アリの集団採餌の実験を開始しトレイル上での場所の特定はフェロモンではなく,太陽の角度など他の情報を利用していることを示した 以上の結果のうち1は,現在投稿中であり,2,3については,それぞれ日本物理学会(成果2),日本応用動物昆虫学会(成果3)で中間報告を行った。
|