一般に量子臨界現象は、有限温度の2次相転移に比較すると、order parameterの発散が弱く、量子臨界点の特異性の観測は容易ではない。我々は重い電子系Ce(Ru1-xRhx)2Si2や、弱い反強磁性金属(V1-xTix)203における、反強磁性-非磁性状態間の量子相転移を中性子散乱法を用いて反強磁性スピン揺らぎを直接観測することにより、明らかにする試みを行ってきた。量子臨界点にjust tuningするには、圧力パラメターを変化させることが素直なやり方であって、静水圧性が低温においても非常に良いヘリウムを圧力媒体にして低温(T<1K)領域まで実験することは、量子臨界現象を中性子を用いて定量的に調べる目的では重要である。この目的で使う圧力セルとして、金属部分からのバックグラウンドが少ない英国のラザフォード・アプレトン研究所で使われているタイプを制作し、圧力セルからのリークを止める試験および工夫を試みた。液体ヘリウムを用いたクライオスタット等でも問題になるヘリウムガスのリークは、高圧下だと簡単な設計だと無視できない量があるため、微量のヘリウムガスにより熱伝導をさせる真空槽内に入れることは可能だが、断熱真空槽内に入れるにはリーク量が大きくて問題になってしまう。なるべく簡単に解決するには、吸着剤に吸着させてしまう方法だと考えて試験を行っているが、リーク量が一定ではないこともあり現在は苦戦中である。もうひとつ工夫を行って、断熱真空槽内に入れ得る圧力セルに改良する予定である。
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