分子における等価核子の交換対称性に基づくオルト-パラ状態の問題は、分子を物理的に理解する上で最も重要な基本概念の1つである。我々はS_2Cl_2分子高分解能のマイクロ波分光スペクトル測定によって見いだした回転準位における超微細構造の分裂を解析し(文献)、それによって得られた分光分子定数を用いて、各回転準位のオルト-パラ混合比の理論的予測を行った。その結果、オルト-パラ状態の混合比が最大で0.5%程度と見積もられたので、通常の遷移をSN比200以上で観測できる実験条件を設定した上で、ミリ波、及びサブミリ波帯の分光観測を行った。ミリ波領域ではマルチプライヤーを使った位相安定化光学共振器システムを使って、ミリ波帯高感度分光計測システムによる観測を行った。 一方、サブミリ波領域では強弱比の大きな遷移間の相対強度測定の精度を上げるために、測定系のダイナミックレンジを十分確保する必要があるが、ドライアイス冷却の長光路セル中のS_2Cl_2分子の測定を高調波ミキサーを使った位相安定化した分光システムと液体ヘリウム冷却InSbホットエレクトロン型検出器を用いておこなった。
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