2年計画の初年度にあたる本年度は、超高圧下その場「熱物性」測定のための準備と基礎技術の開発を行った。本研究では、出力が正弦関数的に時間変化するレーザー光を試料に照射し、その応答としての試料温度の時間変化を測定することで、熱物性の情報を引き出すことを計画している。現在までに、アルゴンイオンレーザー用のEOモジュレータを導入して、正弦関数的に時間変化する光を試料に照射するための準備を整えた。一方、現在までのところ、試料温度の時間変化を測定するための準備は十分ではない。早急に準備する予定である。 超高圧下での測定を高精度で実施するためには、試料容積を増大させることが重要である。これを実現するために立方晶窒化ホウ素の砥粒を利用した新しいガスケットをダイヤモンドアンビル装置用に開発した。新しいガスケットを用いることで、従来の金属ガスケットの場合の数倍の試料容積を超高圧条件下で確保することが可能になった。本研究の主題とは異なるが、新しいガスケットを用いることで、二酸化ケイ素ガラスのX線回折測定を100万気圧領域まで実施することに成功した。本研究で目指している「熱物性」測定は、二酸化ケイ素ガラスのX線回折測定と同様に技術的に極めて難しいため、試料容積を増大させることに成功したことの意義は大きい。 次年度は、まず、試料温度の時間変化を測定するために必要な機器を導入し、大気圧下の微小試料に対して「熱物性」測定を成功させる必要がある。その後、新しいガスケットも利用することで、地球惑星深部物質に対する超高圧下その場「熱物性」測定を成功させたいと考えている。
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