研究概要 |
本研究の最終的な目的は火山ガスに含まれるH2Sガスを安全かつ高速に測定する技術を確立することである.SO2ガスは太陽光散乱紫外線を吸収するために野外日中において受動的に観測する技術は確立されているがH2Sには適用することが出来ない.H2Sは火山ガスに特有の成分であり各地の活火山地帯で放出が観察されている.その有毒性により火山地帯で人が死亡する事故が過去に起きている.本研究の手法が確立されれば広範囲に亘りH2Sガスの空間的な分布を求めることが可能になる.本研究の実験装置は以下の要素で構成されている.面発光赤外線ダイオードレーザー(Vertilas社):印加する電圧を変えることにより波長を連続的に変えることができる.H2Sは1577nmに吸収を持つので,この波長に対応したレーザー発振器を購入した.バンドパスフィルター:1580nmを透過中心波長とする干渉フィルターでレーザー光以外の光を遮断する.InSbAsフォトダイオード光検出器:赤外光を効率よく検出する.オプチカルチョッパー:連続発振レーザー光を周期的に遮断しパルス化する.アナログ式ロックインアンプ:オプチカルチョッパーと組み合わせることによりフォトダイオード光検出器の感度を飛躍的に向上させることができる.以上の部品を組み合わせ,面発光赤外線ダイオードから発する赤外光をH2Sガスを封入したガラス製のセルに通し吸収させる実験を行ったが予期するような吸収線を確認するまでには至らなかった.この原因としてレーザー光の波長が実際の吸収線からずれているなどの原因が考えられるが研究期間内に確認するに至っていない.本研究では波長可変レーザーと同期式検出法を組み合わせた構成で赤外レーザー光の検出を確認した.今後引き続き研究を続けることにより防災に貢献する成果が期待できる.
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