研究概要 |
地球中心部の構造を解明するためには,まだ十分に地震波データが収集されているとは言い難い.本研究は,理論的視点と実際的見地から,有効な地震データとその観測方法を追求することを主眼とする.今年度は,主に三つの項目を遂行した.(1)内核からの反射を観測する簡易システムを構築するために,データロガーを導入して動作確認を行った.しかし,広帯域地震計(特にグラルプ社のCMG3T)にセンタリングやキャリブレーション信号を送る配線が,マニュアルに正確に記述されていなかったために,正しい動作を確認するのに手間取った.試行錯誤によって,現在は正しい配線を見出した.(2)既存のデータを用いた解析では,日本に展開されている高感度地震観測網から短周期記録を,広帯域地震観測網から長周期記録を用いて,内核からの反射波の探索を行った.短周期記録においては,PKiKP波が目視で見っけられるイベントもあったが,長周期記録ではそのような地震波は見出されていない.アメリカに展開されている機動地震観測網USArrayにおいて, PKiKP波を確認した.(3)地球シミュレータを用いた波形計算の結果,SKIIKP波はScSScP波というマントル内で多重反射・変換してくる地震波と誤認する可能性のあることが分かった.さらに,地形と地殻の不均質性を考慮した波形計算を行った結果,日本のような起伏に富んで複雑な構造を持つ地域より,中国のような大陸地域で観測する方が,地形などによる散乱波の影響が小さく,微小な信号を観測することに適していることを改めて実感した.
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