本研究は、大きさが300ミクロンほどの貝類の幼生化石を、ボロン法を用いて、堆積岩を分解して得られる残留物より探すことを目的としている。本研究2年目である20年度は、手取層群桑島層、大黒谷層、北谷層から採集した29サンプルについて、ボロンによる分解を試みた。このうち、12サンプルにおいて微小巻貝化石を得た。この微小巻貝化石をふくむサンプルについて、100ミクロンメッシュのフルイで得られた残留物をSEMで検鏡したところ、多くの砕片となった化石を確認した。これらの多くは、貝殻やシャジクモの破片であり、今のところ、貝類の幼生化石は見いだせていない。それでも、いくつかの正体不明の化石を得る事ができ、今後が期待できる。 また、石川県白山市の手取層群北谷層において、あらたな微小貝類化石産地を発見した。この産地では、現地調査においては化石を発見できなかったが、持ち帰った岩石サンプルからボロン法で化石を得たことから、本手段の有効性を確認できたと同時に、未発見の化石への期待が高まる。 発見した微小巻貝化石については、羽毛恐竜等の多様な生物相で知られる中国遼寧省の熱河層群からも共通して産出することが判明し、当時の堆積環境の解析や生物地理の考察において、重要な指標となる可能性が出てきた。
|