研究分担者 |
北里 洋 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, プログラムディレクター (00115445)
土屋 正史 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 技術研究副主任 (00435835)
豊福 高志 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究員 (30371719)
小川 奈々子 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 技術研究副主任 (80359174)
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研究概要 |
本研究は、真核単細胞生物の「生きた化石」であるGromiaについて、殻と細胞の特徴、微生物共生、適応生態などを明らかにして,真核単細胞生物の初期進化がどの様に起きたかを解明することが目的である。平成19年度中は相模湾,下田湾及び下田市や葉山町の岩礁地にて試料を採取し,室内での生態観察と,予察的な有機物分析,電子顕微鏡観察をした。 実体顕微鏡の観察では,Gromiaが仮足を伸ばし,口孔部周辺に堆積物を集める様子,複数の個体が配偶子を放出する模様をビデオ記録することができた。下田湾で採取した生きたGromiaの殻には,周囲の堆積物中にみられるものと類似した磁性鉱物が集積し、その量は個体差が認められた。磁性鉱物の集積量と個体の大きさを比較した結果,大きい個体ほど多くの磁性鉱物を取り込んでいる傾向があり,個体の最大殻直径と弱い相関が見られた。他の地域で採取した(Gromiaはこのような磁性鉱物の集積を示さないが,それは元々堆積物中に含まれていないためと考えられる。他の内容物より重い磁性鉱物の殻内での分布が集中しているため,シャーレ内でGromiaは磁性鉱物が下方にした姿勢を示すことが多い。 相模湾で採取されたGromiaの殻周辺と殻内の内容物の炭素及び窒素同位体比を測定した。その結果,殻周辺は中心付近より負の同位体比を示した。これは殻周辺の栄養段階が高いことを示唆する。顕微鏡観察の結果,Gromiaの細胞は殻周辺に存在し,中心部に周囲の堆積物から取り込んだ砕屑物などが存在していた。 中心部には硫化鉄と見られる粒子があり、この硫化鉄が細胞内のバクテリア代謝に開連して殻内で生産されている可能性もある。今後の硬究では,殻内のバクテリアの有無や種類の同定.物質のフラックスをきちんと把握することで,Gromiaとの共生関係を明らかにして進化過程を解析したい。
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