研究概要 |
本年度は、先ずX線観察用の加熱炉を作成する準備を行った。このとき、(1)X線を透過し内部が観察できること(外壁、断熱材と炉心管がX線をよく通すこと)、(2)珪酸塩が溶融する高温が安定に到達されること(最高到達温度1600℃)、(3)炉内の雰囲気を制御し、鉄の酸化・還元をコントロールすることが出来る、ことを目標とした。様々な材質の模擬加熱炉を作成し、X線透過撮影及び加熱シミュレーションを行ったところ、銅の薄板による手作りの外壁が炉壁に、アルミナファイバー素材であるルビールが断熱材として、またアルミナ管に白金線をまいたものが炉心管として最も適していることが分かった。しかしながら、1300℃を越えると白金線が破断し、1600℃までの温状態を安定して実現できなかった。この原因として電熱線として使われている白金の消耗、高温時の変形などが考えられる。当面は、1300℃で十分ではあるが、より高温を得ることに加えて、CT撮影のためにも、今後は炉心管を小型化し、またX線の吸収の少ない発熱体を用いるなど、改良が必要である。 加熱炉が完成したときには、大容量の3次元画像とその時間発展のデータが得られることになる。3次元画像の解析のためには、すでにSLICEと呼ばれるソフトウェアを開発しているが(中野司ら,2006,http://www-bl20.spring8.or.jp/slice)、これのバージョンアップをおこなった。 また、火山ガラスの脱水発泡過程を調べるために、ガス内熱炉を用いて多量の含水玄武岩ガラスを新たに作成した。本年度は、通常のガス混合炉を用いて加熱実験をおこなっところ、微細空隙の生成がおこる前に、輝石の微細結晶が生成されることがわかり、この特異な発泡モードには結晶成長との相互作用が重要であることがわかった。
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