研究概要 |
高温高圧下における3次元イメージングは,試料の形状,体積,界面など試料の構造の3次元情報が非破壊で得られるため,地球科学的にも物質科学的にも重要な技術である。X線トモグラフィはこのような3次元イメージングの有力な手段であるが,現在までのところアメリカ合衆国の放射光施設Advanced Photon Source (APS)でのみ高温高圧下の実験が可能である。この3年間,我々はAPSのグループと共同して放射光を利用したX線トモグラフィの実験技術の開発を進め,APSにおいて高温高圧における鉄合金メルトの界面張力の研究を行ってきた。我々が開発してきた実験技術を更に発展させ,かつ,日本で実験を行うようにすることは地球惑星科学のみならず,高圧力科学に寄与することが期待される。そこで,本研究では日本の放射光施設でX線トモグラフィの実験を行うことを目的に,これまでに蓄積したノウハウを取り入れた新しい高圧装置を開発している。平成19年度は放射光施設のビームラインに持ち込むことが出来る小型高圧装置の製作を行った。前半は装置の概念設計およびトモグラフィシミュレーションを行って詳細仕様を詰め,後半に専門業者と装置の設計を行い,トモグラフィ実験に使用できる高圧装置の製作に至った。高圧装置は約20cm×20cm×20cmの大きさで重量は40kgほどであり,SPring-8のトモグラフィ専用ビームラインに持ち込んで使用できる。また,今回製作した高圧X線トモグラフィ装置では,通常のトモグラフィ実験と異なり360度全方向の視野が確保できない。このような場合に2次元イメージから3次元イメージを再構築する手法の開発を行った。
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