研究概要 |
本研究は,各種溶液を電極とした大気圧グロー放電の生成を行い,発光分光法(OES),溶液のpH(=-Iog[H+])および分光エリプソメトリー(SE)による実時間その場診断を通してプラズマ生成機構と溶液物理化学との関連を考察した。特に各種電解質溶液を対向電極とした空気およびArプラズマ生成に対して溶液構成元素の発光強度,電子密度,自己バイテス:V_<self>および溶液のpH変化に着目した。その結果電解質溶液を対向電極とした大気圧プラズマ生成では,従来の溶液スパッタリング,蒸発に加えて,溶液のプロトン濃度に依存した2次電子放出過程がプラズマ生成に関与していることが分かった。特に平成19年度は,プラズマ状態の等価回路による考察および溶液pHと伝導度がプラズマ生成に及ぼす効果につて検討した。プラズマインピーダンスは,これまでの溶液pH<2.5および10-13領域とそれ以外で顕著な相違を示した。さらに溶液の抵抗率はプラズマ生成に及ぼす効果について各種溶液を用いて調べた。塩,強酸,弱酸としてNaCl,HCl,CH3COOHを選択し,溶液伝導度とプラズマ発光,電子密度の関連を考察した。その結果各種溶液に対して伝導率:0.5S/cm前後で発光強度が極小値を示し,その前後で増大する傾向を示した。伝導率:0.5S/cm以上の濃度領域では,電子密度の増大に伴い発光強度は増大する。一方0.5S/cm以下の領域においては,プラズマ域では,の温度上昇にともなう発光強度の増大が見られた。この要因を塩,強酸,弱酸溶液内のイオンの水和状態および移動度の相違に基づいだモデルを提案した。さらにプラズマ照射により正イオンの照射により表面近傍にカソード電極層が形成されることで電気2重層が形成され,バルク溶液中の負イオンが電気泳動によりカソード表面に輸送され、放出される可能性を示した。実時間紫外・SEおよびポッケル素子を用いた表面電荷計測から大気圧プラズマー溶液界面に電気泳動による吸収層の存在を明らかにした。これらの要因には,プラズマ-溶液界面における電気2重層の形成,電気泳動等の効果が揚げられる。
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