研究課題/領域番号 |
19654088
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
水野 彰 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (20144199)
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研究分担者 |
高島 和則 豊橋技術科学大学, 工学部, 准教授 (60303707)
安田 八郎 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (20200503)
栗田 弘史 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (70512177)
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キーワード | 放電プラズマ / 誘電体バリア放電 / λファージ / DNA / タンパク質 / 不活化 |
研究概要 |
昨年度までの研究によって放電プラズマが生菌数の減少に寄与することを明らかにした。そこで今年度はこの解析をさらに詳細に進めた。ウイルス・細菌の不活化メカニズムは、放電空間内に発生する電位差による細胞壁の破壊や電流による細胞変性が考えられているが、推測の部分も多く、どの程度それぞれの要素が影響を与えているか未だ明らかにはなっていない。そこで不活化機構の解明に最も適した材料はDNA及びタンパク質のみで構成されるバクテリオファージであると考え、大気圧下での誘電体バリア放電を用いてλファージを検体とし、その不活化メカニズムの解析を行った。λファージはDNAとそれを取り囲むキャプシドと呼ばれるコートタンパク質からなっている。これにより生菌数の減少がタンパク質へのダメージによるものか、あるいはゲノムDNAへのダメージによるものかを明らかにすることを目指した。 具体的には以下のような手順で実験を行った。まずλファージを誘電体バリア放電に曝露することによりコートタンパクおよびDNAに損傷を導入する。次にこれからDNAを抽出し、新しいコートタンパクでパッケージングする。このようにしてできたλファージはDNAのみに損傷を有していることになる。放電に曝露したλファージとそれを新しいコートタンパクでパッケージングしたものを大腸菌に感染させ、その感染能力を比較した。放電に曝露したλファージではプラズマへの曝露時間の増加に伴って感染能力が速やかに低下した。一方、放電に曝露したサンプルを新しいコートタンパクで再パッケージングした場合、放電への曝露量が小さい場合には感染能力がほぼ完全に放電プラズマに暴露していないものと同程度まで回復する結果となった。この結果は、この実験系では放電プラズマによるλファージの不活化に寄与する要因としてはコートタンパク質の損傷が支配的であるということを示唆している。
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