多重らせん構造でのプラズマ生成及びLC共振現象の確認、及び負屈折率現象の確認実験を行った。 まず、絶縁被覆導線により、2重に重なったらせん構造(以下、「対らせん構造」と呼称する)を外径約1.4mmで作製した。このアレイ構造をマイクロ波のマイクロストリップ線路上に配置し、マイクロ波の周波数掃引により透過・反射特性を測定した。すると、透過・反射とも減少する領域が約5GHzと約10GHzに観測され、これは共振現象によるものと推測される。理論的予測より、この共振点の高周波数側で、透磁率が負となる領域が現れる。 次に、この対らせん構造を外径1.8mmのガラス管の中に挿入し、アレイ構造を作製して、両導線間に5kHzの交流電圧することでらせん構造内外にプラズマを生成することに成功した。このプラズマは、これまでの我々の別電極構造による検討より、プラズマ中の電子密度は10^<^12>cm^-3以上と見積もられ、上記の共振点近傍では誘電率が負となっていると思われる。 ここに、マイクロ波を周波数掃引して入射した。すると、5GHzの高周波側と10GHzの高周波側に、プラズマが無い場合に比べて透過率が上昇する領域が観測できた。通常プラズマを生成するとその中での電子の弾性衝突が電磁波の減衰の原因となり、このような透過波が上昇する現象は説明できない。従って、当初のコンセプト通り、この領域で屈折率が虚数ではなく負となり、透過率が改善したものと思われる。この推定を裏付けるため、我々は参照波とミキサーを使った透過波の位相測定を行い、らせん構造のアレイ部分で屈折率が-0.03〜-0.6となる部分があることがわかった。 すなわち、以上の結果より、当初のコンセプト通り、プラズマにより動的な負の屈折率状態(左手系媒質)が実現できた。引き続き、その条件の最適化と詳細な機構解明を進める。
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