研究概要 |
本研究課題では、ε-Fe_20_3ナノ微粒子磁性体の巨大な保磁力発現のメカニズム解明、金属置換による磁気特性の向上、誘電特性と磁気-電気効果について検討を行った。ε-Fe_2O_3に4種類あるFeサイト(Fe1, Fe2, Fe3, Fe4)のうち一つだけ存在する4配位サイト(Fe4)を非磁性金属イオンで置換することによって保磁力・飽和磁化の制御を行い、高機能性磁性体の創製を行った。その中で、Feの一部をGaで置換した、イプシロン型-ガリウム酸化鉄(ε-Ga_x Fe_<2-x> O_3; 0.10<x<0.67)ナノ微粒子(粒径が30ナノメートル程度)を化学的に合成し、ガリウム置換量に応じて30GHzから150GHzまでの高い周波数領域で、ミリ波を有効かつ周波数選択的に吸収することを見出した。また、理論計算によりこの系列の材料では、ガリウム置換量により吸収可能な最大周波数は200GHzまでに達することを示した。このミリ波吸収は、イプシロン型-ガリウム酸化鉄磁性体がもつ高い保磁力により高い周波数に自然共鳴が現れたことに起因していた。現在、次世代方式として、ミリ波(30~300GHz)を用いた高速無線通信法が大変注目を集めており、特に、室内LANなどにはミリ波による無線高速通信が期待されている。また、近年ミリ波発生用の安価なCMOSの開発も発表されており、100GHz領域のミリ波の使用が本格化してきている。しかしこれまで、80GHz以上のミリ波を周波数選択的に吸収する材料はほとんどなく、この帯域での電磁波干渉の危険性が危惧されていた。イプシロン型-ガリウム酸化鉄は、金属酸化物であるため長期間に渡って安定であり、電磁波干渉抑制材料として、また、その選択的な共鳴周波数を用いてミリ波発信機を安定化させるサーキュレーターやアイソレターなどの新規ミリ波用電子デバイスへの応用も期待される。
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