超音速ジェットと各種線型・非線型レーザー分光を用いてカリックス[4]アレン(C4A)とカリックス[5]アレン(C5A)のレーザー分光に成功した。実験は新規に開発したポリイミド製高温パルスノズルを用い、試料を120-150℃に加熱してHeキャリアーガスと混合し、真空中に断熱膨張させることにより、超音速ジェットを生成した。電子スペクトルはレーザー誘起蛍光法で、また赤外スペクトルは赤外-紫外二重共鳴分光法で観測した。解析の結果、C4AはC_4対称を持つ分子種が一種類、C5AはC_5対称を持つ分子種と、一つのフェノールが上下反転した構造をもつ二種類のコンフォマーが存在することが分かった。 次にゲスト分子に希ガス、窒素、メタン選び包接実験を行った。通常の芳香族分子のvan der Waalsクラスター比べ、カリックス[4]アレンでは100倍以上のクラスター形成(すなわち包接)能力があることが明らかになった。また、これらのゲスト分子は、一個目はC4Aに内包され二個目からは外側に付着することも分かった。一方、水分子をゲスト分子にした場合、水分子は内包されるのではなく、C4Aの水酸基に水素結合することも分かった。
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