本研究の目的は、カリックアレンがゲスト分子を包接する機構を分子レベルで明らかにすることである。そこで、本年度は、カリック[4]アレン(C4A)と、希ガスおよび水分子との分子クラスターを生成し、レーザー分光実験と量子化学計算を行い、C4Aがこれらゲスト原子・分子を取り込む機構について研究を実施した。C4A〓希ガス系ではC4A-Ar_nクラスターについて二波長共鳴イオン化実験を行い、C4A-Arには内包型と外側に付着した構造の2つの異性体があり、内包型がより安定であること、さらにC4A-Ar_n≧2では、Ar_nクラスターがC4Aに内包される構造が安定であると結論した。量子化学計算との結果から、内包型C4A-Ar_nクラスターの生成には結合エネルギーだけではなく、分子線中での衝突機構が大きく関与していることが分かった。一方、水分子をゲスト分子としたC4A-H_2Oクラスターでは、水分子はC4Aに内包されず、C4Aの4つの水酸基と環状の水素結合を形成すると結論した。また、赤外-紫外二重共鳴分光を用い水分子の解離エネルギーを3140cm^<-1>と求めることができ、この大きな値は環状の水素結合構造を支持する結果となった。このように、大きな分散力を持つAr_nクラスターはC4Aに内包され、一方H_2Oは水酸基側に水素結合する構造であることを明らかにすることができた。これらのことは、C4Aに包接されるゲスト分子の設計において、親水基、疎水基の役割を考える上で重要な結果である。
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