研究概要 |
1.亜臨界および超臨界多成分系水溶液の巨視的な臨界パラメータ(臨界温度,臨界圧力)や相挙動を広い圧力(50MPaまで)と温度(673Kまで)において決定するために非接触型音響法を開発した。音響装置は,1/8インチのステンレススチールキャピラリー,セラミックヒータ,恒温槽,PZTトランスヂューサからなり,セル外部から高圧の系の固有振動数スペクトルを解析した。液体に接触しているキャピラリーに沿った音波の伝播過程を解析するソフトウエアを開発した。 2.高温高圧下において,水,エタノール,水-エタノール混合溶媒,塩化ナトリウム水溶液の予備測定を行い,1の装置とソフトウエアが原理的に働くことを確認した。しかしながら,多成分系については多くの共鳴周波数が現れるために解析が困難であることがわかった。 3.この問題を解決するために,装置の形状をU-チューブ型振動型を試作して密度を測定する方法を試みている。 4.中性子同位体置換とEmpirical Potential Structure Refinement法を併用して,超臨界状態(350℃,100MPa)における0.3モル分率メタノール-水混合流体の構造(3次元構造,溶媒クラスター分布,水素結合分布)を明らかにした。 5.100-400℃,30-100MPaにおいてFTIR法によりメタノールのOH伸縮バンドを測定した。OHバンドの解析により温度、圧力増加によりメタノール中の水素結合が減少することが明らかになった。 6.室温から超臨界状態におけるメタノールのX線非弾性散乱を測定した。密度範囲0.791-0.60g/cm^3では密度減少とともに音速正の分散は減少し,流体力学的値に近づく。さらに密度が減少して臨界密度に接近すると,高い運動量移行値については再び分散は増加する。この結果から臨界密度近傍では小さなメタノールオリゴマーが生成することと結論した。
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