紫外線を励起光とした場合、光触媒性能を有する金属酸化物(酸化チタンやチタン酸ストロンチウム)と光触媒性能を持たない金属酸化物(石英やアルミナ)とに分けられるが、X線を励起光とした場合には、光触媒性能の有無に関わらず、高度に親水化する結果が得られている。この問題に対して、光触媒性能を際立たせるために、本年度は、基板表面を清浄化した試料と負荷となる油を塗布した試料とで結果に差が見られるか、比較実験を行った。その結果、清浄化した試料の場合には、光触媒性能の有無に関わらず、親水化速度に殆んど差が見られず、いずれも1分以内に高い親水性表面となった。これはX線の高いエネルギーによって、表面構造が変化する点が共通であるためと考えられる。一方、表面に微量の油を塗布した試料を用いた場合には、酸化チタンやチタン酸ストロンチウムのみ親水化した。これは、表面吸着物質との電子移動効率の点で、酸化チタンやチタン酸ストロンチウムの方が優位であるためと考えられた。金属酸化物のX線励起親水化現象において、重要な反応過程が明らかになってきた。引き続き、湿度や酸素分圧の影響、光量や光エネルギー依存性などの各種反応因子に対する検討を深め、最終年度に論文をまとめる予定である。
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