デンドリマー構造に共役鎖を内包させてそれを足場として利用すると、デンドリマー分岐鎖内に様々な機能性部位を精密に配列できる。さらに、この共役鎖内包型デンドリマーを自己組織化させれば、機能性部位の高次集積が可能となる。以上の点に着目して、前年度までに親水性末端基と疎水性末端基を導入した両親媒性共役鎖内包型ポルフィリンデンドリマーを合成し、デンドリマーが水中でミセルを形成することを明らかにした。本年度は、向かい合う二つの末端に親水性基を導入した、共役鎖内包型両親媒性ポルフィリンデンドリマーの合成と会合挙動に関して研究を行った。 最初に、両末端に親水性基を持つデンドリマーの合成を末端アセチレン基を持つポルフィリン誘導体と親水性末端を持つデンドロン二分子を薗頭反応させて行った。合成したデンドリマーはTHF中で461nmに鋭いSoret帯の吸収、670nm付近にブロードなQ-bandの吸収を示した。蛍光スペクトルでは、680、755nmにポルフィリン部に特徴的な蛍光が観測された。次にデンドリマーのTHF溶液に水を段階的に加えて会合挙動を調べた。THF/水=50/50までは吸収スペクトルにほとんど変化はみられなかったが、THF/水=約40/60から吸光度が減少し始め、THF/水=10/90でほぼ一定となった。このとき吸収のレッドシフト、ブロードニングが観測された。このことはデンドリマーが溶液中で会合体を形成していることを示唆している。また、THF/水=10/90では蛍光は完全に消光されていた。THF/水=10/90の溶媒でTEM観察を行ったところ、幅5nm程度のワイヤー状の会合体が観測された。
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