イオン伝導体は化学物質のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する電池システムの固体電解質として利用できるため、近年の携帯電話やノート型パソコンを始めとするモバイル機器の爆発的な普及に伴い、その需要は急速に拡大している。本研究では無機・有機の複合材料である金属錯体を集積化させる事で、イオン伝導性と電子伝導性と共存する、新た混合伝導体を開発する事を開発する事を目的としている。今回、ジチオカルバミン酸銅二価錯体と二価の臭化銅、更にフェロセン誘導体を反応させる事で、混合原子価二次元シート間にフェロセニウムイオンをゲスト分子として取り込んだ一連の新規混合原子価二次元層間化合物を合成した。この化合物に関して誘電測定を行った所、約200K以上で何らかの緩和現象により発現する誘電応答を観測した。緩和時間、および活性化エネルギーを求めた所、これら誘電応答がアルキル基の応答というよりむしろ、カチオンの電場応答に基づくシグナルである事が明らかになった。今後このカチオンをよりイオン半径の小さなリチウムイオンなどに換える事で、本錯体にイオン伝導性を持たせる事を検討している。また、単核錯体の集積化を利用した多孔性材料の開発も試みた。具体的には酸化還元活性で、かつ嵩高い配位子であるフェノチアジンジチオカルバミン酸を配位子としたトリス鉄、及びコバルト錯体を合成した。しかし、X線構造解析の結果これらに関してチャネル構造は確認できなかった。
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