研究概要 |
架橋配位子としてそれ自身がプロトン・電子ドナー(PETドナー)であるテトラヒドロキシベンゾキノン(H_4C_6O_6:H_4THBQと略)を用い、H_2THBQ^<2->で架橋された一連の二核錯体[M_2(H_2THBQ)(TPA)_2](CIO_4)_2を合成する事に成功した(M=Co(II),Ni(II),Zn(II);TPAはトリスピリジルメチルアミンの略)。さらにCo(II)及びZn(II)二核錯体については単結晶X線解析による構造決定に成功した。架橋ユニットであるH_2THBQ^<2->の電子供与能とプロトン供与能は、原理的には金属イオンの酸化電位とルイス酸性度でそれぞれ調整できるので、一連の二核錯体の単離によりPETドナー性のチューニングに成功したと解釈できる。 PETアクセプター性を有する架橋配位子としてロジゾン酸(H_2C_6O_6:H_2Rhodと略)を用い、TPAをキャッピング配位子とする銅二核錯体[Cu_2(Rhod)(TPA)_2](BF_4)_2をアセトニトリル反応溶液より単離し、X線構造解析に成功した。一方、メタノール中での同様な反応ではRhod^<2->骨格の変化を示唆する生成物が単離された。構造解析の結果、Rhod^<2->の6員環骨格は5員環から成るC_5O_5H-COOCH_3に変化し、それを架橋基とする二核錯体[Cu_2(C_5O_5H-COOCH_3)(TPA)_2](BF_4)_2として単離された事が確認された。架橋基C_5O_5H-COOCH_3の生成は、溶媒中に存在するメトキシドイオンによりRhod^<2->のカルボニル酸素が攻撃を受け、その後、分子内C-C結合の切断と再結合による結果であると解釈された。
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