研究概要 |
架橋配位子としてそれ自身がプロトン・電子ドナー(PETドナー)であるテトラヒドロキシベンゾキノン(H_4THBQと略)を用い、既に構造解析に成功しているH_2THBQ^2架橋二核錯体[M_2(H_2THBQ)(TPA)_2](ClO_4)_2(M=Co(II),Ni(II),Zn(II);TPAはトリスピリジルメチルアミンの略)と同タイプに属するMn(II)、Fe(II)二核錯体の合成と構造解析を行った。これら錯体はいずれも空気に対して不安定であるが、脱酸素下アセトニトリル溶液中でp-キノンと定量的な反応を示した。特にZn(II)二核錯体では反応がクリーンに進行し、反応溶液中からヒドロキノンと[Zn_2(Rhod)(TPA)_2]^<2+>(Rhod^<2->:ロジゾン酸ジアニオン:H_2THBQ^<2->の2電子2プロトン消失体に相当)が検出された。ESI-mass、UV-visスペクトルによる反応追跡より、この反応は以下の式(1)に表される1段階2電子2プロトン移動反応である事が明らかになった。 [M_2(H_2THBQ)(TPA)_2]^<2+> + p-キノン→[M_2(Rhod)(TPA)_2]^<2+>+ヒドロキノン(1) 反応溶液から最終生成物である[Zn_2(Rhod)(TPA)_2](ClO_4)_2(錯体A)が単離され、X線構造解析にも成功した。錯体Aは[Zn(TPA)]^<2+>ユニットとロジゾン酸との反応からも直接合成できる事が確認できたので、この方法を応用することによりRhod^<2->架橋二核錯体[M_2(Rhod)(TPA)_2](ClO_4)_2(M=Mn(II),Fe(II),Co(II),Ni(II),Cu(II))の単離に成功した。現在、これら錯体の構造、PETアクセプター性、磁性について検討中である。
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