プロトン・電子ドナー分子であるテトラヒドロキシベンゾキノン(H_4THBQ)を用い、H_2THBQ^<2->ユニットを2つ組み込んだ亜鉛四核錯体[Zn_4(L_<mac>)(H_2THBQ)_2](CF_3SO_3)2(1)(L_<mac>:大環状配位子)を合成し、その結晶構造解析に成功した。錯体1とp^-キノンとの反応をESI-mass、^1H-NMR、UV-vis分光法を駆使して追跡し、2段階で進行する定量的な4電子4プロトン移動反応を確認した。 (ここでRhod^<2->はロジゾン酸ジアニオンを示す) [zn_4(L_<mac>)(H_2THBQ)_2]_<2+>+P^-キノン→[Zn_4(L_<mac>)(H_2THBQ)(Rhod)]^<2+>+ヒドロキノン(式1) [zn_4(L_<mac>)(H_2THBQ)(Rhod)]^<2+>+P^-キノン→[Zn_4(L_<mac>)(Rhod)_2]^<2+>+ヒドロキノン(式2) 各反応における生成物[zn_4(L_<mac>)(H_2THBQ)(Rhod)](cF_3SO_3)_2(2)と[Zn4(L_<mac>)(Rhod)_2](CF_3SO_3)_2(3)をそれぞれ単離し、キャラクタリゼーションを行った。錯体2は非常に濃い褐色を呈し、その色が錯体分子内でπ-πスタックしたH_2THBQ^<2->⇔Rhod^<2->間の電荷移動吸収に起因することを明らかにした。錯体3の架橋Rhod^<2->部位は非常に反応性に富み、非プロトン性溶媒中では痕跡量の水と反応して複雑な骨格変換過程を経た後、[Zn_4(L_<mac>)(Croc)_2](CF_3SO_3)_2(4)に変化する(Croc^<2->=C_5O_5^<2->:クロコン酸ジアニオン)。一方、メタノール中では溶媒由来メトキサイドの攻撃を受けた後に同様な骨格変換を生じ、[Zn_4(L_<mac>)(C_5O_5H-COOCH_3)_2](CF_3SO_3)_2(5)に変化する(C_5O_5H-COOCH_3^<2->:クロコン酸のメチルエステル付加体に相当)。錯体5についてはX線構造解析にも成功している。
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