研究概要 |
本研究は,蛍光性DNA結合試薬(リガンド)を利用するDNA損傷検出法の開発を目的とする。具体的には,DNA損傷修復過程の中間体として,あるいは塩基損傷に誘起される二重らせん構造の歪みにより生成する(疑似)脱塩基部位を,DNA損傷のマーカーとして「蛍光性リガンドにより検出すること」を試みる。平成19年度は,修復酵素(グリコシラーゼ)に匹敵する結合親和力を有するリガンド(ナフチリジン誘導体)の開発を達成するとともに,発蛍光型応答を示すリガンド(ピラジン誘導体)を新たに見出した。 研究開始時点において,蛍光性ナフチリジン誘導体(2-amino-7-methyl-1,8-naphthyridine)がモデルDNAの損傷の有無を蛍光検出しうることを見出していたが,この母体に複数のメチル基,あるいはフェロセニル基を導入することで,結合親和力が一桁以上増加することを見出した。モデルDNAを用いた検討では,これらのリガンドを用いることで,プリン塩基が関与する損傷の有無を極めて簡便に蛍光検出することが可能である(蛍光消光応答を利用)。 一方,シアノ基を有する3,5-ジアミノピラジン誘導体(3,5-diamino-6-chloro-2-pyrazinecarbonitrile)が蛍光強度増加型のリガンドとして機能しうることを新たに見出した。モデルDNAを用いた検討では,蛍光応答特性は脱塩基部位の隣接塩基に依存するものの、隣接塩基としてグアニンを含まない塩基配列に適用可能で,アデニンが関与する損傷を検出することが可能である。
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