1.アイスクロマトグラフィー 氷表面が液体か固体かという問題について、アイスクロマトグラフィーによって一定の見解を得た。すなわち、氷/ヘキサン(+THF)界面においては、マイナス5℃以下では氷表面は固体であり、アイスクロマトグラフィーの保持は水素結合によって決まる。それに対して、温度が高くなるとヘキサン及び氷中の成分に依存して表面に液層が発達することがわかった。バルク物質の相転移温度と同様に比較的狭い範囲で固体から擬似液層への転移は起きるが、物質の特性を基にバルクの融解とは異なる現象であることを確認した。また、アイスクロマトグラフィーの保持変化から、この表面液層が2-5nm程度の厚さを持つことを明らかにした。この他、アイスクロマトグラフィーの実用的展開として、アミノ酸誘導体、葉緑素成分、女性ホルモンなどの分離が可能であることを示した。氷は、従来用いられてきたシリカゲルに比べて、分析物のヒドロキシル基の数や位置に対する選択性が高い傾向が確認された。 2.氷を用いる光導波路 氷の中に有機溶媒、水を通じて光ファイバー同様の光導波路を形成するための基礎検討を行った。ペルチェ素子を±0.01℃程度の温度精度で制御しその上に板状の透明氷を成長させ、そこに内径0.1mm〜0.7mm程度の円筒状の穴を作るための手法を種々検討した。その結果温度制御を適切に行うことで安定に細工することが可能になった。また、その内部を水溶液や有機溶媒で満たしたときの光導波特性を検討し、溶媒がない場合や光導波特性のないガラス/水の系に比べて特段の光導波性を示すことがわかった。しかし、テフロンAFに比べて極端に光導波性が弱く、氷表面に凹凸や傷によるものと考えられた。この克服が重要なポイントであると考えている。
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