クモは自ら張った古い巣を集めて、間もなく巣を新しく張り直すとされるが科学的に明らかでなかった。申請者は巣の張り替え観察を行った結果、ズグロオニグモは古い網を口に入れている可能性を示唆した。そこで、糸がクモの体内で分解されるのかどうかを調べるために、クモの唾液を採取し、それでクモの糸が分解されるのかどうかを調べることにした。 1.コガネグモおよびナガコガネグモロから唾液を取る方法を模索した。クモという小さい動物から、どのようにして唾液を取り出したらよいのかがわからなかったが、悪戦苦闘の末、クモの口から唾液を取り出す方法を見出した。1匹からわずかしか採取できないので根気のいる作業であった。 2.唾液の採取が可能になった後、唾液の保存方法を模索した。 3.クモには力学的に丈夫な縦糸と粘着球のついた横糸がある。まずは、クモの巣から横糸を取り出して、横糸に唾液を添加した状態での反応を光学顕微鏡で調べることにした。その結果、横糸は比較的容易に分解されるように見受けられた。詳しくは、電子顕微鏡観察によって確認する必要がある。一方、縦糸は唾液によって容易には分解しなかった。経糸の代わりに、牽引糸に対して唾液を垂らしたが、分解の様子は見られなかった。 4.唾液が乾燥しないような条件を探しながら、唾液分解実験を行なっている。このように、平成19年度は、クモの糸に対する唾液の分解実験において、どのようにして実験を行うべきかの条件を探したところである。とにかく、横糸は唾液によって分解されたという結果が得られた。
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