有機カルボン酸と2価コバルトイオンの自己集合組織化による水熱合成を用いる方法では、一般に転移温度40K程度の強磁性の層状化合物が得られる。本年度は、構築に用いる有機カルボン酸にトポ光反応を起こしうる二重結合などの反応部位をもつ分子を用いて、強磁性体の構築検討を行った。1)光透過性のある強磁性体に、いかに光反応性のある分子を埋め込めるか、2)いかに光反応部位を光反応しうる配置に配列させるか、3)いかに光学活性な生成物が得られる配座に光反応性分子を配置させるか、の3点がポイントとなる。1)については、有機カルボン酸と2価コバルトイオンの自己集合組織化による水熱合成を用いる方法を用いることにより、本年度達成した。2)については、様々な分子を試みたが、十分に光反応するまでにいたっていない。分子の大きさの問題があると考えられた。3)では、ラセミ体のCr(oxalate)33-イオンを埋め込むことによる転移反応をもちいて試料作成を試みた。その結果構造的に光反応すると考えられる磁性体の構築に成功した。これらの化合物について光反応を行うための、SQUID磁束系内での光照射装置を試作した。
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