細胞による糖鎖生産を効率的に行った。ターゲットとなるオリゴ糖鎖ごとに、最も生産性の高い細胞の種類とプライマーの種類を探索し、EGFRと相互作用するシアリルラクトースについての生産方式を確立した。糖鎖プライマー中に存在する官能基や糖鎖の違いによる細胞内への取り込みについて詳細に検討し、細胞内の糖転移酵素による糖鎖伸長や内在性糖脂質合成の阻害について調べた。糖鎖伸長反応の播種細胞数依存性、プライマー濃度依存性、培養時間依存性を詳細に調べた。細胞培養の培地中に放出される糖鎖伸長プライマーの効率的な精製方法について検討した。 オリゴ糖のオリゴマー化に関しては、細胞によって得られる2-アジドドデシルシアリルラクトシドの変換によって、GM3型オリゴ糖(シアリルラクトース)のオリゴマー化合物を合成した。具体的には、アグリコン中のアジド基の還元反応について、これまで用いてきたトリフェニルボスフィンによる還元に加え、パラジウム触媒による水素還元など別の還元方法を検討した。また、得られるアミノ基を有する化合物(リソGM3の類似体)が、カルボン酸と縮合する条件(縮合剤の種類、溶媒、温度など)を検討した。 糖脂質類似体およびそのオリゴマーのEGFRリン酸化阻害に関しては、EGFRを高発現しているA431細胞に各化合物を様々な濃度で添加し、チロシンキナーゼ活性阻害能を評価した。A431細胞を無血清DMEM培地中、GM3、GM3類似体と共に37℃で24時間培養した。その後、EGFを含む無血清培地と交換して1時間培養し、細胞を溶解する界面活性剤を入りの緩衝溶液で細胞を溶解し、溶解液を遠心分離した。上澄み液をSDS-PAGE(ポリアクリルアミド電気泳動)で分離した後、ウエスタンブロット法で解析した。
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