研究概要 |
H20年度は、前年度のDFT計算の結果と基礎的な実験データに基づき、高い屈折率(n)と高いアッベ数(v)を同時に有し、屈折率分散の限界線を超える基本骨格として、複数の硫黄(S)原子を橋渡し(ブリッジ)構造として含む一連の芳香族構造と脂環構造を選定し、その基本骨格を有するポリマーの合成と評価を行った.その結果、まずジフェニルスルフィドまたはチアンスレン骨格を有するジアミンから合成される含硫黄ポリイミド(PI)が、黄色の着色を呈するもののn>1.7かつv>20を示し、400℃以上の熱分解温度を示すことが明らかとなった.このPIのv値は高いとは言えないが、nが非常に高いことから従来の分散限界線を越えている.一方、東工大・上田研究室との連携により、環状のジチオカーボネートとノルボルナンを側鎖に有するポリメタクリレートが、可視域で透明でありかつn=1.592〜1.640,v=40.5〜44.5と既存の光学ポリマーを大きく凌駕する高屈折・低分散性を示すことが明らかとなった.但し、このポリマーは耐熱性の向上が課題である.本研究の結果として、従来から言われてきた分散限界線は精密な分子設計により克服可能であることが証明され、また高屈折・低分散の新規光学ポリマーの分子設計指針を示すことができた.
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