本研究では実用的な共役ポリマー系FET材料の開発を目的とし、共役ポリマー鎖を環状絶縁物により被覆し、化学的に安定な被覆共役ポリマーの新しい合成法の開発を行ったところ、高被覆率かつ溶解性の被覆共役ポリマーの合成に成功した。即ち、メチル化CDのモノトシル体からπ共役ゲスト連結型メチル化CDを合成し、水-メタノール中で、自己包接錯体を形成させ、続く、ボラン酸アニリンとの鈴木-宮浦カップリング反応により、キャッピングを行い、固定化された[1]-ロタキサンを合成した。これの両端をアミノ基に変換後、エチニル基を有する[1]-ロタキサンモノマーへ誘導した。最後に、二価の銅塩存在下、Eglinton反応によりロタキサンモノマーの重合を行い、その経時変化をGPCにより確認したところ、5分、1時間後には多量体の存在が見られ、2日後にはモノマーが完全に消失し、被覆共役ポリマーが生成した。また、MALDI-TOF-MS測定からも、モノマーの分子量の整数倍に相当するピークが規則的に観測され、ポリマーの形成が示唆できた。得られたポリマーは強い青色の蛍光を示した。また、被覆されているため、従来の共役ポリマーに比べ、非常に高い蛍光量子収率(0.75)を示し、耐久性も兼ね備えた蛍光材料としての応用も期待できる。
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