金属・半導体粒子は、10nm以下の小さな粒子になると、量子サイズ効果によってバルク結晶とは異なった物理化学特性を示す。ナノ粒子の合成法は、大きく2つに分類でき、化学反応を利用して溶液中で生成させる方法と、真空技術を利用して基板上に直接ナノ粒子を析出させる方法がある。本研究では、このイオン液体の蒸気圧が無いという特徴を利用し、従来のウエットおよびドライプロセスによる2つの合成法の長所のみを利用して、2種類の金属を同時にスパッタ蒸着することによって、バルク材料から合金ナノ粒子を直接作製する新規合成法を確立した。 イオン液体として、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートを用い、これをスライドガラス上に均一に塗布したのち、20Paアルゴン雰囲気下で金と銀を同時にスパッタ蒸着し、AuAg合金ナノ粒子を作製した。 スパッタ蒸着後のイオン液体の吸収スペクトルでは、合金ナノ粒子に由来する表面プラズモンピークが観察され、さらにその吸収ピーク波長はターゲットにおける金の面積比(fAu)の増加に伴って、長波長シフトした。このことは、fAuを変化させることにより、得られるAuAg粒子の合金組成が制御できることがわかった。イオン液体中に分散したAuナノ粒子を、イミダゾール基をもつシランカップリング剤で表面処理した石英基板と反応させることによってAuナノ粒子薄膜を形成させた。得られた薄膜は、サイズが約20〜30nm程度の粒子が密に担持されたものであり、560nm付近に局在表面プラズモンに由来するピークを示した。調製直後の粒子サイズが2.6nmであったことから、Auナノ粒子の担持過程で粒子どうしの凝集が起こることが示唆された。
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