研究概要 |
本研究では、ハイドロゲルが有する三次元空孔内部において、無機化合物からなる微粒子を調製する手法を電気化学的アプローチにより確立し、有機-無機複合材料(コンポジット)を創製することを目的としている。本年度は、複合材料調製のために、サブマリン型アガロースゲル電気泳動装置を改良したものを作製した。陽極槽と陰極槽がゲルを挟んで互いの溶液が混合しないようにスペーサーをセットし,50-100ボルトの直流電圧が印加できるように工夫した。この改良装置を用いて1-3wt%のアガロースゲル担体,種々の濃度の塩化カルシウム水溶液、リン酸二水素ナトリウム水溶液をそれぞれ陽極槽、陰極槽に満たして電圧印加により各イオンを対極に向けてゲル内に泳動させた。その結果、30分間の電圧印加においてゲルの乾燥重量に対して1-10wt%のハイドロキシアパタイトが形成することを見出した。さらに、電場を印加中にゲル内のpH低下を抑制するために、あらかじめゲルに水酸化カルシウムを10mmol/Lの濃度で添加しておくことにより、pH低下の抑制効果とともに、ハイドロキシアパタイト形成がわずか3分間で完了することも見出した。得られた複合材料はX線回折、走査型電子顕微鏡観察、赤外分光測定などから、ハイドロキシアパタイトを主成分としていることが確認された。同様の手法により,塩化カルシウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液の組み合わせからバイオミネラルである炭酸カルシウムが生成できることも新たに見出した。得られた炭酸カルシウムはカルサイトと帰属される結晶形態をとることをX線回折から決定しており、バテライトやアラゴナイトのような多系が得られるような調製条件の確立を現在進めている。以上の研究成果は国際論文誌、依頼総説、招待講演により情報発信している。
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