正20面体準結晶に形成されるマイクロボイドの形成と成長について研究した。ここでは、2004年に我々が発見したZn-Fe-Sc準結晶を研究対象とした。この準結晶は、熱力学的な安定相であるばかりでなく、約824℃において調和融解することが明らかとなった。さらに、液相からの徐冷によってミリメートルサイズの単準結晶が形成した。このような単結晶のなかに直径1〜50μmのマイクロボイドを多数観察した。これらのボイドは、正20面体対称性を反映した多面体の形状を持っていた。冷却速度を6.6〜362K/h、焼き入れ温度を800〜600℃と変化させて一連の合金試料を作製し、ボイドの平均サイズや体積密度の熱処理依存性を調べた。その結果、ボイドの成長は活性化エネルギーは約3.1eVの熱活性化過程であることが判った。また、作製したほぼ全ての試料において空隙率が1.4〜3.4%と、ほぼ一定であることが明らかとなった。従って、ボイドの成長は本質的にオストワルド成長と考えられる。これは、他の準結晶合金について提唱されていた「過剰熱空孔の凝集によってボイドの形成・成長が生じる」とする解釈とは相容れない。むしろ、液体から準結晶に固化した時点で、既にマイクロボイドが多数形成されて、その後の熱処理過程において成長すると考える方が妥当である
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