超伝導マグネットは、多大な電力を消費することなく、非常に強い磁場を発生することが出来ることから、エネルギー、医療、輸送など応用分野は非常に広い。 本研究は、現在行われている冶金学的な線材製造技術に頼らず、「新しい視点から、超伝導マグネットを製造する技術」の開発を目標とし、我々が考案した直径Dの薄膜円筒基板上に超伝導体をヘリカルな線状に形成することにより、一層分のソレノイドコイルを得る方法(πD法)を採用した。この方法では、必要な超伝導体形成技術は、πD、すなわち、数m以下の長さに対するもので十分となる。本研究では歪に対して超伝導特性が安定で、大型超伝導機器への利用が有望視されているNb_3Al超伝導体を対象とした。 今回、直径50μmのNbワイヤーを金属基板上に配置し、その上からAlパウダーをプラズマ溶射にて吹き付け、サンプル前躯体を作製した。その後、Nbワイヤー直上を電子ビームで照射してNb_3Alサンプルを作製した。前躯体は、基板材質とプラズマ溶射の溶射電流値をパラメータにした。また、電子ビーム照射は、電子ビームの出力と送り速度をパラメータにした。 サンプルの評価および解析は、(1)X線回折、(2)SQUIDによる磁化の温度依存性、(3)SEMによる断面観察とEDSによる断面の元素分析、(4)電気抵抗の温度依存性測定、(5)磁場下での臨界電流密度測定、を実施した。 基板材質の違いでは、SUSの基板を用いた場合では、Nb_3Alを確認することはできなかった。Nb基板では、電子ビーム照射の投入熱量が1300W以上において、X線およびSQUIDにてNb_3Alを確認することができた。しかしながら、SEMによる断面観察結果からこれらの投入熱量では、Nbワイヤーが完全に溶融しており、Nb_3Alの生成部位を特定するには至らなかった。本研究では、当初目標としていた直線状のNb_3Alを作製するには、Nbワイヤーの径が小さかったため十分な成果を得ることが出来なかったが、Nb_3Al超伝導特性の確認および磁場依存性の臨界電流の評価など多くの知見を得ることが出来た。
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