液晶相の一種であるコレステリックブルー相(BP)の相挙動は温度とキラリティを変数とする状態図で表現されるが、キラリティを増加させるとBP3と等方性液体、BP1とBP3、およびキラルネマチック相とBP 1との間に臨界点が存在することが予想される。もしそうであれば超臨界状態に特有の特異な物性の発現が期待できる。現在、高キラリティ領域の研究の進展を阻んでいるのは、液晶に対して相容性が高くねじれ力の強いキラル分子がないためである。本研究では、この問題を解決するためのキラル分子を新規に開発し、BPの超臨界状態の存在を初めて確認するとともにその物性を明らかにする。さらに、光異性化を示すキラルドーパントを導入することにより、キラリティの光制御を行う。キラルドーパントとして、軸不整骨格を有するイソソルビド誘導体およびビナフチル誘導体を種々合成し、らせんねじれ力(HTP)の温度依存性を測定した。その結果、これまで報告例のある物質と比べ最高クラスのキラルドーパントの合成に成功し、その温度依存性についても正・負・依存性小のものを見いだした。母液晶との相溶性についても検討し、シアノ系、フッ素系液晶に対して相溶性の良好なキラルドーパントの化学構造に関し新たな知見を得た。また、側方置換基として光異性化分子を結合させた光異性化キラルドーパントを合成し、それを含むキラル液晶において、光照射に伴うBP-キラルネマチック相の可逆的光相転移を観測した。
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