研究概要 |
この研究課題では,「柔軟で安定度が高く,電気的特性のよい半導体薄膜素子」の実現手法として,「層状構造を持つ物質の利用」を提案し,研究を進めた。具体的には「単層化グラファイト(グラフェン)」および「単層化層状カルコゲナイド」の利用を試みている。平成20年度は,単層剥離した層状物質,特にグラファイトの溶液中単層剥離によって得られた可溶化グラフェンを,高機能な素子材料として応用することを目指して実験を進めた。研究成果は以下の通りである。 (1)酸化グラフェン溶液を用いて薄膜を塗布し,さらに化学/加熱還元する手法の改良に努めた結果,導電性が高く(2000S/cm台)可視光~近赤外領域で透明なグラフェン薄膜の形成に成功した。この透明グラフェン薄膜を電極に用いた有機薄膜太陽電池を試作したところ,これまでに最高で1.2%の光電変換効率が得られている。 (2)塗布グラフェン薄膜をソース/ドレイン電極とするボトムコンタクト型有機電界効果トランジスタ(FET)を試作したところ,p型(P3HT活性層),n型(PCBM活性層)の両方でFETの塗布形成に成功した。またこれらのFETでは,金蒸着膜を電極とする素子よりも高い移動度が得られた。グラフェン電極と有機半導体の接触抵抗を測定したところ,金電極よりも低い値が得られている。
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