平成19年度は以下の2項目の研究課題について検討を進めた。 1.Ar^+エッチングによる表面の清浄化 Ar^+エッチングを広い面積で実現するために、現在保有しているRHEED装置を改造し、そこにイオンガンを設置する予定で装置の真空設計を行った。イオンビームを広い面積でスキャンしてエッチングできるイオンガンの選定に手間取り、予算枠内で購入できるイオンガンの導入検討に多くの時間を割く結果となった。その後、装置を組み付けて実験を開始しようとしたところ、Arの導入量に現有のターボポンプの排気量が追いつかず、最終的に排気系を再設計して差動排気を導入する事となり、差動排気に用いるターボポンプの納入を待っている段階である。 2.MO-CVDによる高品質ZnO薄膜のホモエピタキシャル成長 従来のアセチルアセトン亜鉛(Zn-ACAC)に比べて安定な昇華特性を有する液体状Zn-MOPDを装置に導入し、実験を開始した。この材料は、大気中で安定といわれており、Zn-ACACと分解特性も同程度であるという触れ込みで研究をスタートしたが、この安定性が大きな問題を生んでしまった。 液体原料が装置内部の冷えた部分に付着し、それが油のように流れ、真空度の低下、原料の再蒸発という弊害が発生した。対策として、装置の構成を大幅に改造し、装置内部に温度の低い領域を置かないことでZnO薄膜の堆積にこぎ着けた。しかし、堆積速度が増加せず、安定なはずの原料が徐々に経時変化して、蒸発率が24時間単位で徐々に減少するという長期的な不安定性が明らかとなり、サファイア基板を用いた堆積を続けて実験条件を最適化しており、高価なZnO薄膜を用いるホモエピ成長には至っていない。
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