平成20年度は以下の2項目の研究課題について検討を進めた。 1.Ar^+エッチングによる表面の清浄化 昨年度は装置の設計に手間取ったが、排気系を再設計して差動排気を導入し、Ar^+によるイオンエッチングにこぎ着けた。問題点としてはエッチング位置の検出が難しく、テレビカメラ等を導入して基準位置を設定する必要が残っている。また、ZnO基板の研磨傷を除去し、平坦性を実現するためには、酸素中での高温処理が最適であることが予備実験で確認されていた。本年度はRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を導入して、ZnO基板に熱ダメージを与えないように熱処理を行なった。 2.MO-CVDによる高品質ZnO薄膜のホモエピタキシャル成長 昨年度はアセチルアセトン亜鉛(Zn-ACAC)粉末に比べて昇華特性が安定な液体状Zn-MOPDを導入したものの、原料の経時変化、チャンバー内への付着や再蒸発が原因とされる膜質のバラツキに悩ませられ、最終的にはこの材料の使用を断念した。 本年度は、液体状Zn-MOPD原料に代わる安定な原料形態を模索し、ファイバー状のアセチルアセトン亜鉛(Zn-ACAC)原料に行き着いた。この原料はZnO光触媒の製作過程で得られる本研究室オリジナルの原料である。粉体原料特有の加熱による凝固が原因となる昇華特性低下も起こらず、さらにファイバー同士が積層するために非常に広い表面積が確保でき、液体材料のバブリングと同様な昇華特性が得られた。ZnO基板はa軸配向のZnO(1120)とc軸配向のZnO(0002)とし、この材料を用いて酸化亜鉛薄膜のホモエピタキシャル成長を試みた。液体状Zn-MOPD原料では、堆積条件の最適化によりZn(0002)上に表面平坦性の高いZnO(0002)薄膜が成長したが、本原料ではZnO(1120)上に結晶性、平坦性の優れたZnO(1120)薄膜が成長した。また、この薄膜表面には、a軸固有のステップ構造も確認できた。
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