研究概要 |
従来、中性子の結像は、適当な反射ミラーやレンズが存在しなかったためにその実現が困難であった。本研究では、X線領域で開発中のミラー加工技術を利用して中性子の結像用素子の製作と中性子顕微鏡光学系の構築を目的としている。 本年度は、中性ミラーの反射素材の検討を行った。 (1) 中性子顕微鏡の波長を0.5nmから1nmに想定し、ミラー材料を検討した。中性子はミラー面にすれすれ入射(斜入射)すると屈折率の差から全反射を起こす。全反射が起こり始める斜入射臨界角が大きいほど光学系が明るくなる。いろいろな元素の中でもニッケルは比較的大きな斜入射臨界角を有し、鏡面としても面粗さが小さく出来るのでミラー面候補として検討した。 (2) 斜入射領域の結像では、単一反射によるコマ収差が極めて大きく顕微鏡には適さない。本研究ではコマ収差の少ない回転双曲面と回転楕円面を連結したウオルターミラーを採用することにした。中性子用ウォルターミラーは内径1cm前後のパイプ状の形をしているので特別な蒸着法が必要となった。本研究では,レーザーアブレーションを利用した内面蒸着を試みることにした。予備的な段階として平面状ミラーに蒸着を試みた結果、面粗さとして10nm以下のスムーズな面が得られた。
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