研究概要 |
計画に基づき測定システムを構築した.システムはフェムト秒光パルスを用いたテラヘルツ帯時間領域分光システム(測定帯域0.1〜3THz)に紫外線発生機構を組み合わせた.試料は5Kまで到達する低振動型冷凍機にて冷却できるようにした.テラヘルツ帯時間領域分光システムによりテラヘルツ波パルスの電場波形を測定する.これにより試料を透過するテラヘルツ波の振幅と位相の情報が得られる.振幅と位相情報から材料の複素屈折率を導出できる.さらに試料のテラヘルツ帯複素誘電率及び複素透磁率を求める解析方法を検討した.一般的には振幅(透過率)及び位相シフト測定では複素透磁率及び複素誘電率のそれぞれの実部と虚部を独立に求めることはできない.しかしながら今回用いた試料は絶縁体であるため,反強磁性共鳴近傍の周波数では複素誘電率に急激な分散はないと考えることができる.この仮定のもとで透過率及び位相シフトスペクトルから複素誘電率スペクトルを導出する.次に複素誘電率スペクトル及び透過率・位相シフトスペクトルを用いて複素透磁率スペクトルを導出することができる.試みに反強磁性体NiOの透過測定(室温)から,NiOの反強磁性共鳴周波数(1.1THz付近)における複素誘電率及び複素透磁率を導出した.反強磁性共鳴周波数で複素透磁率は減少していることがわかった.しかし透磁率は正のままで左手系物質に必要な負透磁率は実現していないことがわかった.次年度は十分低温においてNiO及びMnOの反強磁性体の複素透磁率を調べる.また試料への紫外線照射実験は当初計画通り次年度に行う.
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