最近、申請者らはソフトな材料群の表面を解析するための電界誘起表面歪顕微鏡の着想を得た。これは試料表面に近づけた探針から生じるナノメートル程度の広がりを持つ局所電界によって材料を変形させ、その応答からナノレオロジー測定を行う、というものである。本研究ではこの着想を発展させ、液体をはじめとするソフトマテリアル表面をナノメートル分解能で観察する新規の手法開発を目指した。本年度は高空間分解能測定を実現するために、探針の一制御を1nm精度のピエゾアクチュエーターデバイスによって行い、数μm程度の電極探針-試料表面間距離での測定を実現した。この距離によって測定の空間分解能が向上するという理論的予想を検証するために、試料の粘性が傾斜的に変化する材料を作製し、表面の応答特性の空間分布を測定することにより十分な空間分解能を確認した。この研究を通じて、表面と探針間の距離を変化させることで、表面力である界面張力と体積力である弾性との分離測定が可能であるとの着想を得、実際にゲル状の物質に対してその時間応答と変位の大きさの距離依存性を調べることにより、両者を独立に決定することに成功した。また、将来的な顕微鏡下での測定にむけて、表面に照射したレーザー光が形成するスペックルパターンの画像処理により、表面変形を定量的にかつ2次元画像として評価する手法を確立した。これにより、レーザー光が明瞭な反射パターンを形成しない凹凸のある試料表面についても計測が可能になり、適用可能な測定対象材料の範囲が大きく拡大した。
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