研究概要 |
本年度は,微小領域に物性分布を誘起する為の励起レーザ光学システムの開発及び健全性の評価を含んだシステム構築を重点的に行った.さらに実際に気液界面へと適用し,マイクロスケール界面制御の予備的評価を行った.小型半導体レーザ及び無限共役光学系を用いて,スポット径数μmオーダの集光光学系を構築した.さらに高精度スキャンシステム(主要購入備品)を導入し,励起光源の駆動を外部制御方式とすることで1MHzまでの高速変調を可能とし,高い操作性と安定性を有した励起レーザ光時空間制御システムを構築した.ビームの集光形状はスリットスキャン式ビームプロファイラを用いた精緻な計測及び評価を可能とし,精密な熱流動現象評価が可能な構成とした.レーザ集光加熱と界面形状の精密計測を同時に実現するため,微小流路外部に蛍光溶液層を組み込み,溶液層の蛍光発光を気泡照明光とする気泡観察法を新たに開発した.性能評価の結果,従来のバックライト法と同等の計測精度を有することを確認した.界面操作の予備的実験として,吸収染料を微量添加したシリコンオイルを液相,空気を気相として,T字型微小流路を用いて生成した微小気泡に対して励起レーザ光を集光したところ,界面周辺に流動が発生して微小気泡がレーザ光の集光部へ移動する挙動を確認した.壁面に付着した気泡に適用すると,気泡が壁から引き離され,流路中央部で滞留する挙動を示し,この現象は局所的温度上昇によって誘起された表面張力勾配が駆動力となることを可視化により明らかにした.また,レーザ光を走査することで選択的に気泡の位置を操作可能であることを実験的に明らかにし,高い追従性を有することを併せて確認した.さらに,直径約100μmの気泡を移動するために必要な光出力はレーザピンセット等他の方法に比べて低いμWオーダであることを明らかにし,本手法の高い駆動効率及び応用性を示した.
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