水との接触角が152°と非常に大きい超撥水加工を格子状に施した伝熱面を作成し、プール沸騰実験を行った。超撥水コーティングのパターン化にはフォトリソグラフィー手法を用いた。準備した伝熱面は直径30mmであり、加工パターンは、格子状は3×3、4×4、5×5mmの3種類、全面超撥水加工面、および鏡面仕上げである。 実験は、大気圧のもと、飽和状態で行った。超撥水加工面では、伝熱面の接触角が大きくぬれにくいため、水中でも空気の層が離れない、そのため、はじめに沸騰容器を減圧した後、試験液体である水を注入した。次に減圧状態のまま伝熱面を加熱し約2分間沸騰させて超撥水加工面上の空気を除去し、大気圧に戻した。その後、伝熱面ブロックのヒーター入力をステップ状に膜沸騰まで上昇させた後、下降させた。各点で定常状態において測定した。 プール沸騰実験の結果、以下の知見を得た。 (1)超撥水面の沸騰には鏡面仕上げのような核沸騰域が存在せず、ΔTsatがわずか3.0Kにおいても超撥水面では伝熱面のほぼ全体が蒸気膜に覆われ、膜沸騰のように大きな気泡を発生する。 (2)過熱度10K〜20Kにおいて超撥水面は鏡面仕上げ面の1/3から1/20の熱流束である。 (3)超撥水面と鏡面仕上げの膜沸騰域ではほぼ重なり、これはBerensonの式と殆ど一致する。このことから超撥水面において核沸騰領域は存在せず、低い過熱度から膜沸騰していることがわかる。 (4)格子状伝熱面では格子の大きさによる伝熱特性に差が見られない、低過熱度域において、鏡面仕上げ面に比べ、いずれの格子パターンでも熱流束が大きくなっており、熱伝達が良くなっている。 (5)格子状に超撥水加工した伝熱面では、低過熱度域で熱伝達が良くなり、沸騰開始時のオーバーシュートが見られない。
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