研究概要 |
申請者は,微生物の持つ走性といわれる,環境下において各種情報に対して一定方向に移動する性質を利用して,微生物の行動を自在に制御し,微生物を「生きたマイクロマシン」として工学や医学などに活用することを研究している.本研究では,ミドリムシが青色の光に対して集まる正の指向性光走性を利用し,青色レーザ光をガルバノスキャナにより,プール内に自在に高速走査できる装置を開発し,プール内に任意形状の青色光の照射領域を形成することで,ミドリムシを青色光の照射領域に集めることで集団を形成し,その集団を様々な位置・形状に変形・移動させるように制御することで,ミドリムシ集団により物体のマニピュレーションを行わせようというものである. 本年度は,最初にレーザ光の照射強度とミドリムシの集団形成過程について調査した.その結果,指向性光走性で集まるため,光が強すぎても弱すぎてもミドリムシは集まらず,5mWのレーザに対して,50%減衰のNDフィルタを7枚重ねたときに,ちょうど中心位置が最も密度が高くなることがわかった.またレーザ光を移動させた場合,ミドリムシ集団の追従は,基本的に移動速度が遅い程良いが,移動速度が5μm/s以下であれば,集団をそのまま移動させることができることがわかった. 以上をもとに,集団を物体に当てることで物体を移動させる実験を行った結果,実験範囲では,最高で70Nの接地圧を持つ物体を搬送できたが,物体とプール底面との摩擦や引っかかりなどにより,より低い接地圧の物体でも搬送に失敗することが多く見られた. 以上の結果をもとに,画像処理により物体の位置を検出し,それに合わせてミドリムシ集団の位置を調節する,フィードバック制御プログラムを開発した.これにより,搬送時間は長くなるものの,安定して搬送ができるようになった.
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