本研究の目的は、磁界Bの効果を新たに導入することによりスペーサの沿面絶縁耐力を向上させることである。これは、地球温暖化防止の観点からガス絶縁機器の絶縁媒体が現在使用されているSF_6ガスから温暖化係数は極めて低いが絶縁耐力の弱いCO_2やN_2が使用される場合、あるいは平均自由行程が長くなる真空絶縁の揚合に、スペーサの沿面絶縁耐力の向上が不可欠であるからである。 このような目的のため、今年度は、昨年度に構築した材料表面の磁界分布を3次元的に測定・評価できるシステムを用い、材料表面に設けた電極間の磁界分布や強度を変化させた試料を準備して、部分放電開始電圧および絶縁破壊電圧あ測定を行った。部分放電開始電圧は、CTによる電流検出およびウルトラホーンによる放電音検出に基づき行った。その結果、前年度にもその傾向は示されていたが、電極付近の磁界強度と共に部分放電開始電圧と絶縁破壊電圧が上昇する結果が示されたが、特許出願のため結果の再現性や定量的評価を更に進めたところ、再現性に問題が認められた。材料表面の帯電や大気環境の影響が考えられたため、一度放電が起こると表面を除電しながら実験を進めたり、試料を液体絶縁物中に浸漬して検討を行った。その結果、放電が抑制される結果と促進される結果の両方が認められた。この両者の相違の要因は、現在のところ解明できていないが、この要因を明らかにし使い分けることで、効果的に放電を抑制したり、放電を発生させたりすることができる可能性が示唆された。なお、特許出願を優先させるため、論文や学会発表による成果め公表は行っておらず、この要因を解明し、成果発表を行う予定である。
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