本研究課題では、有機エレクトロニクス分野で最も注目されているフレキシブルディスプレイの駆動デバイスとなる有機電界効果トランジスタ(OFET)の「キャリア移動度」という基礎物性を評価する新たな方法を開発することを目的とし、本年度は、提案する「独立した光キャリア発生ユニットを持つラテラル電極構造」という新しい素子構造のモデルとなる「サンドイッチ型素子のキャリア発生層とキャリア輸送層の間にフロート電極を導入した素子」において過渡光電流波形の観察を試みた。特に、中間フロート電極の材料として、仕事関数の異なる金属(金、白金)を用いることで中間フロート電極とキャリア輸送層とのエネルギー準位の影響を検討した。その結果、電極からキャリア輸送層への注入障壁の無い中間フロート電極材料を用いることで、過渡光電流の観測に成功し、通常のサンドイッチ型素子と同様のキャリアドリフト移動度の値が得られた。この成果は、日本画像学会主催のImaging Conference JAPAN 2007 Fall Meeting(平成19年11月22日、京都)にて口頭発表を行った。 以上の成果は、今回提案した素子構造(独立した光キャリア発生ユニットを持つラテラル電極構造)により、有機半導体薄膜における面内キャリア移動度を測定出来ることを意味すると理解し、次に「光キャリア生成ユニットとラテラル電極構造の移動度測定ユニットとを導線を介して直列に接続した素子」を作製し、その過渡光電流の観測を試みた。しかしながら、両ユニットの抵抗値に大きな差がある場合には、印加した電圧の分配が不適切になり、移動度測定ユニットへのキャリア注入が効果的に引き起こされないことがわかった。
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