研究課題
量子ドット集積体上の電子的な反応拡散系で発生する散逸構造のダイナミクスを利用いたセンサデバイスを開発するため、はじめに量子ドット上の単電子現象を利用した非線形振動子ネットワークを設計した。すなわち、量子ドットと基板との間に単電子トンネル接合をつくり、その単電子回路に多重トンネル接合を通してバイアス電流を流す。そうすると、クーロンブロッケードが成立する温度のもとで、単電子回路は非線形振動を生じて化学反応を模擬する非線形振動子となる。振動の非線形特性は回路パラメータによって制御できる。その量子ドット振動子をネットワーク状にキャパシタ結合し、トンネル待ち時間を利用いて拡散の遅れ効果を模擬した。利用できるナノ構造製作プロセスのもとで必要な非線形特性が生じるように量子ドット構造を設計した。次にその振動子ネットワークの電位分布パターンが反応拡散系の置かれた物理環境(電位・温度・光の二次元分布)によって敏感に変化することをシミュレーションにより確認した。ネットワークの電位分布パターンは環境の僅かな不均一によって発生し、その環境の二次元分布で決まる最終形状に成長する。その動作を利用して物理環境の微小な不均一の二次元分布を検出できることを確認した。
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