研究課題
本研究は、自然現象や社会現象で普遍的に見られるカオス同期に学ぶことにより、カオス同期による端末クラスタの形成、クラスタのグラフ論的性質を理解し、クラスタを活用した経路探索プロトコルを考案することにより、これまでのワイヤレス通信システムに革新をもたらす新たな通信方式を創出することを目的とする。昨年度の研究成果を発展させる研究を行った1。(1)カオス発生器を有するノードを円内あるいは直線に沿ってランダムに配置し、カオス発生器としてChua回路、ローレンツ写像、レスラー写像を用いて数値シミュレーションを行った。その結果、近接したノード問のみで同期クラスタを形成するのではなく、飛び地ができるという現象が見つかった。この現象はノード間の位相に深く関係しているものと推定している。(2)同期クラスタ内の端末間で経路探索のための情報をやり取りすることにより、放送型プロトコルと比較して周波数資源効率の向上と経路探索処理の高速化が可能であるとの考え方に基づき、カオス信号を搬送キャリアとしたクラスタ内でのデータ通信が可能か検討した。その結果、Chua回路によるカオス信号をキャリアとした場合にデータ通信成功の確率が高いことを明らかにした。ただし、この場合には確率100%とは限らず、改善策を探る必要がある。(3)新たに考案した発振周期同期型PLLについて、CMOSを用いて試作・評価を行った結果、正常動作を確認し、所期の目的を達成した。また、クロック生成に必要な3分周回路を考案した。(4)Kuramoto発振器としてリング発振器間の注入同期現象をCMOS試作により検討し、二つの発振器間同期を確認した.
すべて 2009 2008
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Int. J. Circuits, Systems and Signal processing 2
ページ: 219-228