研究概要 |
従来10-13T台の超微弱磁界は超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計を用いてのみ達成できており、脳磁界や心磁界等の生体磁気計測、あるいは非破壊検査等へ応用されている。しかしSQUID磁束計はセンサヘッドを液体ヘリウムや液体窒素で冷却する必要があり、装置の高コスト、汎用性、難アクセス性の点で課題があった。本研究では高い電気抵抗を有する高周波デバイス用磁性薄膜を用いて、室温で動作する薄膜磁界センサを10^<-13>T台の磁界検出分解能を得ることを目的としている。本プロジェクトの研究者らが開発している薄膜磁界センサは磁性薄膜の透磁率変化を表皮効果と強磁性共鳴現象を利用して高感度に検出することを動作原理としており、室温で数100〜数1000%のインピーダンス変化が得られることから、室温で動作する薄膜磁界センサとしてはもっとも高感度であると考えられている。このセンサをSQUIDに匹敵する磁界検出分解能へ高感度化することが求められている。 研究代表者は使用する磁性薄膜へ電気抵抗の高い薄膜材料を適用することにより、強磁性共鳴をより急峻にし、センサのインピーダンス変化の感度を高めることに着目し、本プロジェクトを進めた。 LLG方程式をベースにした理論計算によれば、磁性薄膜の電気抵抗率を1000μΩcm程度にすれば、磁界検出分解能を10-13T台へすることが可能であることを見積もり、高い電気抵抗を有するFeCoA10, CoFeSiB, CoNbZr等の磁性薄膜を用いて磁界センサを開発した。その結果、室温で動作する磁界センサとしては世界で初めて1Hzの低周波磁界に対して、9×10^<-13>Tの磁界検出分解能を達成し、健常者の心臓から発生する微弱磁界の計測に成功した。
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