研究概要 |
本研究の目的は,複雑で多様なシステムに対する制御系設評を実現するために,「分解能」に着目にした新しい制御理論に向けた基礎理論を構築することにある.特に,本研究では,時間,空間,レベル,周波数等異なる性質の分解能にに着目した多分解能動的システムのモデル化とその解析に焦点を当てる. 本年度は,主に「多分解能動的システムのモデル化」に焦点を当てて研究を実施した.また,第8回計測自動制御学会制御部門大会において,オアーガナイズドセッション「多分解能マルチスケールシステム」を企画した. 主たる成果は,以下の通りである. 1.多分解能動的システムの表現と基本解析: 同一ダイナミクスを持つ非常に多くの動的要素が結合された大規模系を対象に,そのシステム表現を提案し,可制御性・可観測性,安定性など基本特性の解析手法を与えた.また,その階層化表現を提案し,分解能と諸特性の関係を考察する枠組みを与えた. 2.多分解能モデル予測制御の可解性保証: 予測区間の時間分解能を多分解能化するモデル予測制御について,各時刻ステップでの問題の可解性を保証するための方策としてつぎのステップである不変集合に拘束する手法を提案した. 3.有限時間線形系の特異値分解: モデル予測制御に用いられる有限時間区間線形系に対して,主要な入出力関係を抽出した低次元化モデルを提案した.得られたモデルは線形系の特異値分解に対応し,システム記述の分解能を制御目的に応じて調整できることを示した. 4.信号伝達の分解能と制御特性: 主として制御対象と制御器の間の信号伝達における粗さや品質に着目し,その制約のもとでの閉ループ系の安定化や制御性能について解析した.特に信号の粗さと実現できる制御性能との間のトレードオフを明らかにした.
|